スキャンダルを起こした女子アナウンサーの多くが、世間のバッシングに耐えかねて退社やフリー転身を選び、結果的に表舞台からフェードアウトしていくケースは少なくありません。そうした中で、なぜ田中萌アナはテレビ朝日に踏みとどまり、再び確固たるポジションを築くことができたのでしょうか。
転機となったのは、インターネットテレビ局『ABEMA』の報道番組『ABEMA Prime(アベプラ)』への抜擢でした。地上波のコンプライアンス規範とは一線を画すアベプラにおいて、田中アナは自らの「傷」を隠すのではなく、むしろ自虐やフラットな現実主義のスタンスへと昇華させました。演出された優等生アナウンサーの仮面を脱ぎ捨て、飾らない本音を語る姿は、同世代の若者層やネットユーザーから「人間味がある」「一周回って信頼できる」という新たな支持を獲得したのです。
公式YouTubeチャンネル『動画、はじめてみました』などで見せる、お酒を飲みながらのトークやズボラな日常の告白も大反響を呼びました。視聴者コミュニティの反応を検証すると、報道当初の「朝の番組を裏切った」という嫌悪感は、10年の歳月と地道な現場実績を通じて「自分の失敗を引き受けて働く一人の職業人」としての評価へと完全に上書きされています。
一方、組織論の観点から見ると、テレビ朝日が取った対応は冷徹かつ合理的でした。アナウンス力に定評がありながらも「既婚者でありながら若手を巻き込んだ」とみなされた加藤アナには厳格なキャリアチェンジを課し、若手で再教育と方向転換の余地があった田中アナにはネット配信という実験的フロンティアで再生の機会を与えたのです。