なぜあの人は動かない?当事者意識の本質と主体性を育てる現場の解法

なぜあの人は動かない?当事者意識の本質と主体性を育てる現場の解法

なぜあの人は動かない?当事者意識の本質と主体性を育てる現場の解法に関するポイントを丁寧にまとめました。専門的な情報をご確認ください。

民間調査機関が2025年末に実施した国内企業のミドルマネジメント層向けアンケートによると、約74.8%の管理職が「メンバーの当事者意識の低さ」を最大の育成課題に挙げています。その一方で、若手・中堅社員側を対象とした意識調査では、「上司から理不尽に責任を押し付けられていると感じる」と答えた割合が62.1%に達しました。ここに、日本企業のマネジメントが直面している痛烈なディスコミュニケーションが存在します。

社員が当事者意識を持てない理由を現場目線で深掘りすると、個人のやる気の問題ではなく、組織側のマネジメント不全が原因であるケースが大半です。大手IT企業を退職した30代エンジニアの告白は、その病理を克明に物語っています。

「『当事者意識を持って提案しろ』と上司は言う。しかし、いざ新しい改善案を出すと『前例がない』『予算がない』『勝手なことをするな』と一蹴される。一方で、プロジェクトが炎上した瞬間だけ『お前も担当者の一人だろう』と連帯責任を負わされる。この環境で自発的に動くのは、精神的な自殺行為でしかありませんでした」

裁量権を与えず決定権も奪いながら、結果の責任だけを負わせる行為は、当事者意識の育成ではなく単なる「責任の転嫁」です。失敗した人間を公衆の面前で詰めるような減点主義の職場では、自己防衛のために傍観者を決め込むのが最も合理的な生存戦略となってしまいます。

ここで鍵を握るのが心理的安全性と当事者意識の相関関係です。Googleの社内調査「プロジェクト・アリストテレス」でも証明された通り、チーム内に「率直な意見を言っても罰せられない」「失敗しても挑戦プロセスが評価される」という安心感があって初めて、人間は他者の領分に踏み込んで主体性を発揮できます。恐怖政治で当事者意識を煽る行為は、現場の口を閉ざさせ、自走組織の芽を根こそぎ摘み取っているに等しいのです。

山崎 陸
著者

山崎 陸

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。