野生と飼育下を比較したとき、最も顕著に現れるのがその圧倒的な「生存格差」だ。動物園や保護施設で飼育されているヒグマやツキノワグマは、30代半ばから40歳を超える長寿を記録することがある。人間で言えば100歳以上の高齢に相当する長寿だ。
野生動物管理学の知見では、この寿命差を生み出す最大の要因は「エネルギー収支の安定」と「医療介入」にあるとされる。野生熊の命を削る最大の難所は、晩秋の過食期(ハイパーファジア)に十分な脂肪を蓄え、冬眠を無事に乗り切れるかどうかだ。不作の年であれば、冬眠中に体力を使い果たし、そのまま二度と目覚めない個体も後を絶たない。
世界自然保護基金(WWF)などの国際機関が示すデータでも、栄養失調や怪我、寄生虫による消耗がない飼育環境は、熊が本来持っている生物学的な生存ポテンシャルを最大限に引き出すことが実証されている。一方で、歯がすり減り、足腰が衰えても生き続けられる飼育下の姿は、自然界の厳しさを逆説的に物語っている。