医学書や従来の統計において、13トリソミーの生命予後は「生後1か月以内に約半数が死亡し、1歳まで生存できる割合は10%未満」と厳しく記述されてきました。しかし、新生児医療(NICU)における呼吸循環管理の高度化や、合併症に対する個別的外科的治療の導入によって、実臨床データには確かな変化が見られます。
日本小児科学会や周産期関連学会の調査研究によると、心疾患に対する緩和的手術や人工呼吸器管理、経管栄養などの積極的医療介入を行った児では、1年生存率が20%を超え、幼児期から学童期へと成長する長期生存例も報告されるようになっています。
かつて主流だった「画一的な延命治療の中止」ではなく、現在は「赤ちゃんの苦痛を取り除き、家族と過ごすかけがえのない時間を最大化する」というアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の理念が浸透しています。具体的には、以下のような多職種チームによる総合的支援が展開されています。
- NICUから在宅医療への移行支援:訪問看護、訪問診療、在宅酸素療法や吸引機の導入支援。
- 小児慢性特定疾病医療費助成:医療費負担を軽減する公的制度の適用と相談窓口の案内。
- 家族へのレスパイトケアとピアサポート:家族会や当事者団体を通じた精神的孤立の防止と社会的支援の提供。
「たとえ短い命であっても、温かい腕の中で抱きしめ、名前を呼び、共に過ごした日々は何物にも代えがたい」という家族の手記や証言が数多く寄せられているように、予後を単なる生存期間の長短だけで測るのではなく、生命の尊厳と家族の絆を支えるケアが現場のスタンダードとなっています。