吉高由里子のキャリアの幕開けは、まさに偶然の産物でした。東京都出身の彼女がスカウトされたのは、高校1年生(15歳)の時。休日に原宿の竹下通りで買い物をしていた際、芸能プロダクション(後のアミューズ系列)の女性スタッフから声をかけられたのがすべての始まりでした。
当時の様子について、本人は過去の特番インタビューで「芸能界に強い憧れがあったわけではなく、声をかけてきたのが優しそうな女性だったから警戒せずに連絡先を渡してしまった」と述懐しています。多くのスター候補生がみずからオーディションの門を叩くなか、気負いのないフラットな姿勢で芸能の扉を開けた点に、彼女らしさがすでに表れていました。
本格的な銀幕デビューを飾ったのは、2006年公開の園子温監督によるカルト映画『紀子の食卓』でした。吉高が演じたのは、崩壊する家庭から逃避し、謎の「レンタル家族」組織へと身を投じていく妹・島原ユカ役。このオーディション現場において、彼女は演技経験の浅さを補って余りある異様な存在感を放ち、監督の目を釘付けにしたと当時の制作関係者は証言しています。
スクリーンに映し出された吉高は、どこか現実離れした透明感と、思春期特有の残酷なまでの純真さを同居させていました。この演技が高く評価され、デビュー早々にして第28回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。映画ライターや熱心なシネフィルの間では、「とんでもない原石が現れた」と騒然となったのです。