ネット上のコミュニティやSNS、知恵袋の投稿を分析すると、口座紐付けに対する恐怖の根底には「制度への無理解」だけでなく「過去の行政不祥事に対する不信」が根深く横たわっている実態が浮かび上がります。
デジタル庁が過去に公表した点検結果では、自治体窓口のログアウト漏れ等に起因する公金受取口座の誤登録事案が全国で700件以上確認されました。当時のニュース報道は世論に深刻なインパクトを与え、掲示板やSNSでは今なお「自分の口座に他人のマイナンバーが紐付いているのではないか」「他人に勝手に見られるのではないか」という書き込みが散見されます。
都内の自治体窓口でマイナンバー関連の対応に当たる担当職員は、次のように現場の実情を語ります。
「マイナポイントの付与期間が終了して以降、窓口で口座登録を希望される方の熱量は一変しました。特に高齢層やプライバシーを重んじる方からは、『登録しないと年金が止められるのか』『預金が税務署に筒抜けになるのか』といった切迫した質問が定期的に寄せられます。誤登録対策のシステム改修が完了し、本人名義以外の登録を弾くバリデーションが機能している事実を丁寧に説明しても、一度植え付けられた行政不信を払拭するには時間を要するのが実情です」
一方で、早期に登録を済ませた生活者からは肯定的な評価も聞こえてきます。確定申告(e-Tax)において所得税の還付金振込先をワンクリックで指定できたケースや、自治体の緊急経済対策給付金が通帳コピーの郵送なしに数日で口座に着金した事例では、「煩雑な書類添付から解放された」という利便性を実感する声が大多数を占めます。恐怖と利便性の評価は、個人の行政に対する信頼度とITリテラシーによって両極端に割れています。