ブリーダーにとって最大の夢とも言えるのが、この青い形質を次世代へと受け継がせるブルーヘラクレスの固定化と累代飼育だ。しかし、この挑戦の前には厚い生物学的障壁が立ちはだかっている。
一般的な飼育環境下において、通常の血統から鮮やかな青色個体が誕生する突然変異の確率は数千分の一から数万分の一以下と見積もられている。さらに厄介なのは、この形質が単純なメンデルの法則に従う優性遺伝や単一の劣性遺伝ではないという点だ。
過去には「ヘラクレス・ヘラクレスの青色血統」や「リッキー・ブルー血統」と銘打たれた種親から累代ブリードが試みられてきた。確かに、青みが出やすい系統を掛け合わせることで出現率を数パーセントから十数パーセント程度まで引き上げることは可能とされている。しかし、子世代が100%青色で羽化する「完全固定」に成功した事例は、2026年現在も公には確立されていない。
羽化時の温度、幼虫期の栄養状態、蛹室内の湿度環境など、後天的なエピジェネティクス(後成的要因)や物理条件が複雑に絡み合うため、親が極上のブルーであっても子は通常の黄色に戻ってしまうケースが大半を占めるのが実情だ。