本作のクライマックスにおける最大の見どころは、5つの独立した怪談がパズルのピースのように噛み合い、読者自身がいる現実世界へと恐怖が拡張する仕掛けにあります。
三津田と三間坂の検証によって導き出される結論は、各話に登場した住宅がすべて「同一の禍々しい霊的ライン(龍脈や土地の因縁)」の上に位置していた、あるいは「呼び寄せる儀式」の結界の一部として機能していたという事実です。一見無関係に思えた犠牲者たちは、無自覚のうちにその怪異の連鎖を補強する役割を担わされていました。
さらに恐ろしいのは、編集者の三間坂自身が無意識のうちに、あるいは怪異の導きによって「この原稿を作家・三津田信三に読ませること」自体が、怪異の拡散条件(トリガー)になっていたという点です。結末において、三津田の執筆部屋のドアや窓の外に「それ」が訪れたことを示唆する描写で物語は幕を閉じます。読者は「この本を読んでいる自分自身もまた、怪異の認知者としてターゲットになったのではないか」という強烈なパラノイア(偏執病)的恐怖を植え付けられます。