北勝海の強さを語る上で欠かせないのが、名門・九重部屋での過酷な稽古と、同郷の偉大な先輩である第58代横綱・千代の富士の存在です。
当時の九重部屋は「稽古場の厳しさは角界一」と恐れられており、師匠・北の富士の指導のもと、千代の富士と北勝海による三番稽古は熾烈を極めました。千代の富士の鋼の肉体と鋭い攻めに毎日何十番も転がされ、泥だらけになりながら立ち向かい続けた経験が、北勝海の強靭な下半身と不屈の闘志を磨き上げました。
1989年(平成元年)秋場所では、同部屋横綱同士の優勝決定戦という大相撲史上初の前代未聞のドラマが実現。本割を終えて12勝3敗で並んだ千代の富士と北勝海が優勝決定戦で激突し、両国国技館を揺るがす大歓声の中で兄弟子・千代の富士が勝利を収めました。勝敗を超えて互いを認め合う九重部屋の二枚看板は、昭和から平成への転換期における大相撲ブームの象徴でした。