『ブルーベリーナイツ』がリスナーの涙腺を刺激し続ける理由は、文学的な歌詞の世界観だけにとどまりません。キーボード・長谷川大喜が奏でる流麗なピアノリフと、綿密に計算された音楽理論的アプローチが融合している点も見逃せません。
サビで用いられているコード進行は、J-POPにおいて最も切なさを引き出すとされる「IV→V→IIIm→VIm(F→G→Em→Am)」の王道進行をベースに構築されています。この進行にテンションノートやベースラインのクリシェ(半音下降)を絡めることで、胸が押しつぶされるような浮遊感と切迫感を創出しています。はっとりの情感豊かなハスキーボイスがトップノートで張り裂けそうに響く瞬間、メロディと歌詞の未練が完全に一体化します。
さらに、映像面での貢献度も特筆に値します。井樫彩監督が手掛けた公式ミュージックビデオ(MV)は、楽曲の持つ退廃的かつ叙情的な世界観を完璧に映像化しました。主人公の女性役には圧倒的な存在感と哀愁を漂わせる染谷有香が起用され、相手の男性役を俳優の池田大が好演。言葉少なに煙草を燻らせ、視線を交わしながらも決定的な言葉を避ける二人の空気感は、YouTube上の再生回数が数千万回を突破した現在も絶賛され続けています。