プロが実際に現場で忍ばせている代表的な隠し味には、それぞれ明確な調理科学的根拠が存在します。ネット上のレシピでも話題を集める「練乳」「らっきょう」「ウスターソース」の3素材が果たす役割を解明していきます。
まず注目すべきは、タルタルソースの隠し味に練乳を入れる理由です。練乳(加糖練乳)は約8%以上の乳脂肪分と高濃度の乳糖を含んでいます。マヨネーズに練乳を少量加えると、濃縮された乳タンパクと微細な乳脂肪球が酢の揮発成分を包み込み、酸味のカドを瞬時に丸くします。砂糖のような単調な甘さではなく、カスタードのようなコクと艶を生み出し、洋食屋特有の「重厚なのにくどくない味わい」を作り上げるのです。
次に欠かせないのが、タルタルソースの隠し味としてのらっきょうの活用です。欧米由来のコルニッション(西洋ピクルス)はハーブの香りと強烈な酸味が特徴ですが、日本の揚げ物やご飯にはやや主張が強すぎる場合があります。そこでタルタルソースのピクルス代用隠し味として威力を発揮するのが、日本の伝統的な「らっきょうの甘酢漬け」です。程よく熟成された甘酢のまろやかさと、シャキシャキとした繊維質が心地よいアクセントを生み、チキン南蛮のタルタルソースの隠し味としても圧倒的な調和を見せます。
そして、隠れた名脇役がタルタルソースの隠し味にウスターソースや醤油を数滴落とす技法です。野菜や果実のエキス、数十種類のスパイス、食塩、醸造酢が熟成されたウスターソースは、わずか2〜3滴でソースの背景に複雑なアンバートーン(深いコク)を付与します。同様に、タルタルソースの隠し味に醤油を使った和風アレンジは、グルタミン酸が卵のイノシン酸と相乗効果を起こし、唐揚げやアジフライとの相性を劇的に高めます。