開業前から現在に至るまで、地域住民の間で度々議論の的となってきたのが「なぜこの規模のイオンモールに映画館(イオンシネマ)が入っていないのか」という疑問です。「将来的に増床して映画館ができるのではないか」という噂がネット上で幾度となく囁かれてきましたが、結論から言えば、堺鉄砲町へのシネコン新設の可能性は極めて低いのが商業的な現実です。
その最大の要因は、堺市周辺におけるシネコンの飽和状態と商圏の重複(カニバリゼーション)にあります。地図を俯瞰すると、イオンモール堺鉄砲町を取り巻く映画館網の密度は関西屈指です。
- MOVIX堺:直線距離で西へ約4km(堺浜シーサイドステージ内)
- TOHOシネマズ鳳:南へ約6km(アリオ鳳内)
- TOHOシネマズなんば:南海本線で七道駅から電車一本、わずか十数分の距離
- イオンシネマりんくう泉南・大日:同一系列内での広域カバー網が既に完成
映画興行ビジネスは莫大な初期投資と広大な容積を必要とするため、半径5〜7km圏内に複数の強力な競合が存在する立地への新規出店は、ディベロッパーにとって過剰な共食いリスクを伴います。イオンモール堺鉄砲町がオープン時にシネコンを組み込まず、その代わりに「赤レンガ建築の景観保存」や「緑豊かな屋外広場空間」を打ち出したのは、近隣施設との無用な消耗戦を避け、独自の地域密着型ブランドを築くための極めて現実的な判断だったと言えます。