都市伝説の中で特にユニークなのが「桐の箱に入れて飼育する」「エサとして白粉(おしろい)を与える」「年に一度しか見てはならない」という具体的な飼育プロトコルです。なぜこのような奇妙なルールが形成されたのでしょうか。
民俗学的な背景を探ると、桐の箱は古来より湿気を防ぎ、防虫効果が高い最高級の保管容器として神宝や貴重品の収蔵に用いられてきました。湿気を吸うと縮んで外気を遮断し、乾燥すると通気性を保つ桐箱は、植物の冠毛や動物の毛玉がカビたり風化したりするのを防ぐ上で、期せずして科学的に理にかなった保存環境を提供していたのです。
一方、「おしろいを食べる」という噂の真相には、静電気と粉体の物理現象が絡んでいます。当時の白粉(主に米粉や炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムを主成分としたもの)を毛玉の周囲に振りかけると、極細の毛繊維が微小な粉末を静電気によって吸着します。数日後に箱を開けると、粉が毛の奥深くに浸透して見えなくなるため、あたかも毛玉が粉を「食べた」ように錯覚したわけです。
さらに「増える」という噂に関しても、湿度の変化によって圧縮されていた繊維が徐々にほぐれて体積が膨張する現象や、絡み合っていた複数の毛玉が自然に分離した状態を「繁殖した」と見誤った結果であると説明がつきます。