累が背負った運命の歯車が狂い始めたのは、人間として生を受けたその瞬間からでした。累の過去と生い立ちを紐解くと、彼は生まれつき体が極めて弱く、走るどころか自力で立ち上がることすらできない過酷な境遇に置かれていました。寝たきりの日々を過ごし、外を元気に走り回る同年代の子供たちをただ部屋の窓から羨望の眼差しで見つめることしかできなかった少年の絶望は、想像を絶するものがあります。
そんな累の閉ざされた世界に突如として現れたのが、鬼の始祖・鬼舞辻無惨でした。無惨はかつて平安時代、自身が病弱で二十歳まで生きられないと宣告された過去を持っています。無惨は自身の境遇と重なる累に対して特異なシンパシーを抱き、「可哀想に、私がお前に命をやろう」と自らの血を与えました。この邂逅こそが、累が人間をやめ、血塗られた怪異へと堕ちていく不可逆の契機となったのです。
鬼の血を受け入れたことで、累は長年渇望していた「強靭な肉体」を手に入れました。自らの足で大地を踏みしめ、暗闇の中を自由に駆け回ることができる全能感に累は歓喜します。しかし、その代償はあまりにも残酷でした。肉体の活動を維持するために必要なエネルギー源は人間の肉と血であり、累は夜な夜な人間を捕食する怪物へと変貌していったのです。