自宅でアイスティーやミルクティーを作る際、多くの人が直面するトラブルが「アイスティーが白く濁ってしまう現象」と「ミルクティーが水っぽくなる問題」です。ネット上では「冷やしすぎが原因」「茶葉が古いから」といった推測が飛び交っていますが、その大半は物理現象を正確に捉えていません。
アイスティーが白濁する物理現象は、専門用語で「クリームダウン現象」と呼ばれます。アイスティーが濁る理由の正体は、紅茶に含まれるカフェインとカテキン(タンニン)が、液温が下がる過程で互いに結合し、目に見える微粒子となって結晶化することにあります。特にアッサムやウバなど、タンニン含有量が豊富な高級フルリーフを熱いまま室温で放置し、中途半端な温度帯(40℃〜50℃付近)をゆっくり通過させると、確実にクリームダウンが発生して美しさを損ないます。
クリームダウンを物理的に防ぐ特効薬は「急冷」です。通常の2倍の濃さ(茶葉2倍、お湯は半分)で濃密なホットティーを抽出し、グラスいっぱいに敷き詰めた大量の氷の上から一気に注ぎ入れます。急速冷却によって分子の結合運動を瞬時に停止させることで、氷が溶けて適度な濃度になりつつ、どこまでもクリスタルに透き通ったアイスティーが完成します。また、タンニン含有量の少ないアールグレイやキャンディ、ニルギリといった茶葉を選ぶことも賢明なアプローチです。
一方、濃厚なロイヤルミルクティーの作り方にも科学的な注意点があります。牛乳は85%以上が水分ですが、同時に脂質とタンパク質の膜を持っています。いきなり冷たい牛乳の中に乾燥茶葉を投入して加熱しても、脂肪球が茶葉の表面をコーティングしてしまい、茶葉の組織がほとんど開きません。結果として「牛乳の味ばかりが強くて紅茶の風味がしない水っぽいミルクティー」に仕上がってしまいます。
濃厚なロイヤルミルクティーを仕上げるには、手鍋に少量の水(50ml〜70ml程度)を沸騰させ、通常より多めのCTC茶葉(球状に丸められた濃厚抽出用の茶葉)を投入して約1分間強火で煮出し、茶葉を完全に開かせることが必須です。茶葉がしっかり水分を含んで濃密なエキスを吐き出したところへ、初めて常温に近い牛乳(150ml程度)を注ぎ入れます。弱火で鍋肌がフツフツとする直前(約65℃〜70℃)まで温め、沸騰させずに火を止めて茶漉しで注ぐことで、乳脂肪分が変質せず、茶葉のコクとミルクの甘みが調和した一杯が完成します。