夏になると山陽本線沿いや国道188号線が渋滞するほど人を集めた下松健康パークの屋外レジャープール。100メートルを超える曲がりくねったウォータースライダーや、日本海側・瀬戸内エリア屈指の規模を誇った人工波のプールは、昭和から平成にかけて子どもたちの楽園でした。その施設が営業終了を決断した背景には、単なる一時的な集客減にとどまらない、極めて構造的な3つの問題が存在していました。
第一の理由は、1980年代から稼働を続けてきた大規模水処理・給排水設備の深刻な老朽化です。波を人工的に起こす巨大な造波装置や、一日数百トンに及ぶ水を循環・濾過する地下配管システムは、開業から30年以上の歳月を経て限界を迎えていました。水漏れや機械トラブルが頻発し、これらを抜本的に全面刷新するには数億円規模の莫大な追加設備投資が必要となる試算が浮上していたのです。
第二の要因は、維持管理費・水道光熱費の急騰と監視要員の深刻な人手不足です。近年のエネルギーコスト上昇に加え、広大なプールを安全に運営するために必須となるライフガード(監視員)の確保は年々難度を増していました。夏季のわずか40〜50日間ほどしか稼働できない屋外施設に対し、通年で発生する保全費と短期間の採用・人件費コストが経営を強く圧迫する構造に陥っていたことは、全国の老舗レジャーランド共通の苦悩でもありました。
そして決定打となった第三の理由が、感染症拡大期に伴う営業自粛と「全天候型施設への事業シフト」という戦略的判断です。営業休止を余儀なくされた期間中、運営元である観光開発株式会社は施設の将来像を再検証。「天候に左右され、猛暑日の熱中症リスクや台風で客足が乱れる夏季限定ビジネス」から、「1年365日いつでも親子や若者が安全・快適に過ごせる滞在型施設」へと舵を切る決断を下しました。その結果、レジャープールとしての役割に正式にピリオドが打たれたのです。