日本中がゴールインを確信していたふたりが、最終的に別の道を選んだ最大の要因は、「結婚後の生き方に対する価値観の不一致」にありました。
当時、トップスターとして君臨していた郷ひろみの家庭環境や周囲は、伝統的な家族観を重視していました。郷自身やその家族、とりわけ母親は「結婚したら家庭に入り、夫を支えてほしい」という願いを抱いていたとされています。息子の健康管理や家庭の維持を第一に考える母親の反対や周囲のプレッシャーは、決して小さなものではありませんでした。
一方の松田聖子は、天性の才能と並外れたプロ意識を持ち、歌手という天職を手放す選択肢は毛頭ありませんでした。「結婚しても歌い続けたい」と切望する聖子と、「家庭を守ってほしい」と願う郷側の思惑は、話し合いを重ねるほどに修復不可能な溝となっていったのです。どちらの思いも純粋であったがゆえに、お互いの人生を尊重した結果としての別離でした。