若き日の小林圭が渡仏し、名だたる名店で修行を重ねていた頃、その傍らには常に千尋氏の姿があった。言葉の壁、人種に対する見えない障壁、そして資金繰りの厳しさ。異邦人がパリで自らの城を持つという無謀とも思える挑戦は、夫婦という最小単位のチームだからこそ耐え抜くことができたのだ。
彼女は単なる「シェフのパートナー」に留まらなかった。フランスの複雑な労働法や税制を学び、現地のスタッフと渡り合うためのタフさを身につけていく。厨房で芸術を創造する夫と、それを現実のビジネスとして着地させる妻。この役割分担こそが、世界を驚かせる快進撃の第一歩だった。