健康診断の心電図検査で指摘される「陰性T波」とは、一体どのような現象なのでしょうか。心臓は全身に血液を送り出すポンプとして、1日に約10万回もの拍動を休むことなく繰り返しています。この拍動は心筋細胞内を流れる微弱な電気刺激によってコントロールされており、その電気的変化を波形として記録したものが心電図です。
心電図の波形は、心房の興奮を示す「P波」、心室が興奮して強く収縮する「QRS波」、そして収縮した心筋が次の拍動に備えて電気的に元の状態へと回復する過程(再分極)を示す「T波」で構成されています。通常、成人の健康な心電図において、主要な誘導(特にⅠ、Ⅱ、V3〜V6誘導など)では、T波は滑らかな上向きの山型(陽性T波)を描きます。
ところが、何らかの要因で心室の筋肉に電気的な回復の遅れやアンバランスが生じると、本来上を向くはずのT波が下向き(谷型)へと反転します。これが「陰性T波(Negative T wave)」と呼ばれる状態です。電気的な回復プロセスに乱れが生じているサインであるため、検診の自動解析システムや読影医は「心筋に何らかの負荷や血流障害が起きている疑いがある」と判断し、要精密検査の判定を下すのです。