通州事件の一報が日本国内にもたらした衝撃は、計り知れないものだった。新聞各紙は現場の惨状を刺激的な見出しとショッキングな写真とともに連日報道。「暴戻支那膺懲(ぼうれいしなようちょう)」の叫びが列島を覆い尽くし、不拡大方針を模索していた政府や軍内部の慎重論は瞬く間に吹き飛ばされた。
この世論の激昂こそが、泥沼の全面戦争へと日本国民を総動員する感情的トリガーとなった。近年でもNHKオンデマンドなどで配信される歴史ドキュメンタリー番組において、当時の熱狂とメディアの共犯関係が検証されている。日中双方が抱く「被害者意識」の原点に通州の惨劇が深く横たわっており、その心理的傷痕は80年以上を経た現在の日中関係にも影を落とし続けている。