1950年代後半、映画黄金期の熱気の中で世に出た彼女は、瞬く間に東映を代表するスターとなった。しかし、彼女を真の演技派へと押し上げたのは、娯楽作のヒロインにとどまらない果敢な挑戦だった。
その決定的な到達点と言えるのが、名匠・今井正監督が手掛けた1964年の映画『越後つついし親不知』である。雪深い北陸の村を舞台に、人間の情念と宿命を重厚に描いたこの作品で、彼女は従来の清純派イメージを微塵も感じさせない鬼迫の演技を披露した。苛酷な運命に翻弄される主人公・おしんを体当たりで演じ切った姿は、当時の日本映画界に強烈な衝撃を与え、批評家や映画ファンを心底唸らせたのである。
華やかな看板女優という殻を自ら破り捨て、人間の業を真っ正面から凝視したこの名作は、今なお文芸映画の最高峰として燦然と輝いている。