三波春夫の代名詞として知られる「お客様は神様です」という名句。しかし、この言葉は世間でしばしば「客の言うことは何でも聞くべきだ」というクレーマー擁護のような文脈で誤解されてきた。本来の意図は全く異なる。
彼が語った真意は、「舞台に立つ際、雑念を捨て、神前で祈るかのように心を澄ませて芸を披露しなければならない」という自戒と敬意の念であった。聴衆を神に見立て、己の芸を極限まで磨き上げて捧げる——この崇高な精神があったからこそ、前立腺がんに冒された身体でありながらも、観客の前では一切の弱みを見せず、完璧なパフォーマンスを全うできたのだ。