文化庁が定期的に実施する『国語に関する世論調査』等のデータを見ても、慣用句の意味や言い回しが時代とともに混同されるケースは少なくありません。中でも「途方に暮れる」は、以下の3つの誤用パターンが目立ちます。
第1に、前述した「途方に迷う」という言い間違いです。「道に迷う」「思案に余る」といった類似の連想が頭の中で衝突し、無意識に合成されてしまう現象です。業務連絡や面接の場で「急な仕様変更があり、現場一同、途方に迷いました」と発言すると、教養や語彙力に疑念を持たれるリスクがあります。
第2に、「途方に困る」という重複表現です。「途方に暮れる」という慣用句自体に「困り果てる」の意味が含まれているため、これでは重言(意味の重複)になってしまいます。
第3に、「単に少し悩んでいる程度」の軽微な事態に対して大げさに使ってしまうケースです。たとえば「今日のランチをどちらにするか途方に暮れた」という使い方は、修辞的な誇張表現としては成立しても、本来の「手段が尽きて呆然とする」という重みからは著しく乖離します。重大な局面で使う言葉だからこそ、文脈の重要度を見極める必要があります。