90年代、テレビドラマの歴史を塗り替えた本格サスペンス『金田一少年の事件簿』において、古尾谷雅人が演じた剣持警部役を覚えている人は多いだろう。重厚でありながらもどこか愛嬌があり、主人公の良き理解者として作品の重石となったあの演技は、まさに彼の真骨頂であった。本格的なサスペンス作品から濃厚なヒューマンドラマまで、彼が画面に現れるだけで物語の解像度が跳ね上がった。
「父は役に自分を呑み込ませるタイプの人だった」——周囲の共演者や日本映画俳優協会の関係者からも、彼の役に対する異常なまでの執念は語り継がれている。役に没頭するあまり、自宅に帰ってきても役の空気を纏ったままのことがあったという。サスペンスの緊迫感を全身で表現する父の姿を一番近くで見つめていた息子は、知らず知らずのうちに「演じることの凄みと恐怖」を皮膚感覚で学んでいったのだ。