アーチ・エネミーの歴代シンガー3人は、それぞれ全く異なる声質と表現アプローチを持っています。その違いを比較すると、バンドのサウンドデザインの変遷が鮮明に見えてきます。
初代ヨハン・リーヴァのデスボイスは、90年代初頭のスウェディッシュ・デスメタル直系のオールドスクールな低音グロウルが特徴です。音程感のある吐き捨て型ボーカルは、冷徹で陰鬱な北欧メロディと絶妙なコントラストを生み出していました。
対する2代目アンジェラ・ゴソウは、女性の骨格からは想像もつかないほど鋭利で凶暴なハイピッチ・スクリームを持ち味としていました。歌詞の発音が明瞭でありながら、耳をつんざくような破壊力を持つ彼女の咆哮は、デスボイスを「過激な雑音」から「研ぎ澄まされた鋭利な武器」へと昇華させました。
そして現ボーカルのアリッサ・ホワイト=グラズは、圧倒的な声量とテクニックを誇ります。地響きのようなディープグロウルから狂気的なハイトーンスクリームまで自在に操るだけでなく、最大の武器といえるのが卓越した歌唱力によるクリーンボイスの存在です。
かつてアンジェラ時代には一切封印されていたクリアな歌唱は、2017年のアルバム『Will to Power』収録の名曲「Reason to Believe」で本格導入され、メタル界に新たな感動を呼び起こしました。ブルータルなアグレッションと天上に響くようなエモーショナルな旋律を行き来するアリッサのダイナミックレンジは、アーチ・エネミーの楽曲のドラマ性を飛躍的に高めています。