アラジンジーニー声優として山寺宏一の名前がこれほど定着した理由は、単なる実力評価にとどまらない。当時のディズニー日本語版制作の現場では、ロビン・ウィリアムズの圧倒的なアドリブ量に対応できる声優が極めて限られていた。複数の声質を瞬時に切り替え、歌もこなし、なおかつコミカルなテンポを崩さない——この条件を満たす人材として山寺の名前が上がった経緯がある。
山寺自身が過去の特番インタビューや自著・関連記事で語ったところによれば、当初は「ロビン・ウィリアムズのあの演技を日本語で再現するのは不可能に近い」というプレッシャーがあったという。しかし、収録を重ねるうちに「日本語としてのジーニー」を作り上げる方向へ舵を切り、結果としてオリジナル版とは異なる魅力を持つ日本語版ジーニーが誕生した。この「経緯」は、吹き替え論を語る上で今も参照される重要なケーススタディである。
実写版での続投理由についても、報道各社の取材データからは「アニメ版からのファン心理への配慮」と「実写版のジーニーが持つ人間味を日本語で表現する最適任者」という二点が指摘されている。ウィル・スミス版ジーニーは、アニメ版よりも感情の振れ幅が大きく、悲哀やユーモアのバランスが難しい。山寺はこの難役を、アニメ版とは異なるトーンで演じ分けた。