興味深いことに、エンターテインメント界やファッション界を見渡すと、笑顔で歯茎が覗く特徴を持ちながら、トップクラスの人気を誇る女優、モデル、アイドルが多数存在します。古くは名女優から、現代のドラマやCMで主役を張る人気タレントに至るまで、「笑ったときの自然体の表情がたまらなく愛らしい」と絶賛されるケースは枚挙にいとまがありません。
なぜ、ある文脈ではコンプレックスとされる特徴が、別の文脈では絶大な魅力として認知されるのでしょうか。社会心理学および進化心理学の観点からこの現象を紐解くと、「ネオテニー(幼形成熟)」と「感情の無防備な開示」という2つの心理的効果が浮かび上がります。
乳幼児は感情が高ぶると顔全体の筋肉を大きく緩めて屈託なく笑います。歯茎が見えるほど口元を全開にして笑う表情は、見る側に「作り笑顔ではない本物の歓喜」「計算のない無垢さ」を強く想起させます。完璧にコントロールされた左右対称のスマイルラインが時に人工的・冷徹な印象を与えるのに対し、大きく歯茎が見える笑顔は、親しみやすさや包容力といった強力な人間味を感じさせるシグナルとして機能するのです。
しかし、メディアに露出する芸能人たちの舞台裏を取材すると、一般人が知らない葛藤も垣間見えます。ある大手芸能プロダクション関係者はこう明かします。
「デビュー当初はその愛嬌ある笑顔が『飾らない魅力』としてファンに支持されていても、キャリアを重ねてクールな役柄やシリアスな大人の演技が求められる段階になると、口元の露出をコントロールするためにボトックス治療を受けたり、数年間の休養期間を利用して歯列矯正に踏み切るケースは実際に存在します」
世間が「かわいい」と称賛する声と、当事者が鏡の前で覚える違和感。この心理的乖離こそが、ガミースマイルという現象を単なる身体的特徴以上の複雑なテーマに押し上げている本質と言えます。