名作の土台を支えたのは、主演を取り巻く豪華実力派キャストの演技バトルだ。財前の終生のライバルであり、純粋に医学の真理と患者の利益を追い求める内科医・里見脩二を演じた松山ケンイチとの対峙は、本作の最大の白眉と言える。
名誉と権力を追い求める財前と、愚直なまでに倫理を貫く里見。対極の位置に立つ二人の視線が交錯するシーンには、一切の無駄な台詞を削ぎ落とした静かな緊張感が漂う。さらに、財前の師でありながら彼への嫉妬と警戒心を燃やす東教授役の柄本明、権謀術数に長けた浪速大学医学部の中枢を固める寺尾聰や岸部一徳らベテラン勢の凄みのある演技が、大学病院という巨大組織の歪みと怖気を際立たせた。誰一人として引かない役者陣のガチンコのぶつかり合いが、観る者を画面の奥深くまで引きずり込む。