パンフレットの記載だけでは読み取れない深刻な差が現れるのが、医療ケアと看取り体制の比較、そして特養入居待ち期間の現状です。
「特養なら最期まで看取ってくれる」という認識は、制度上は半分正しく、現場実態としては条件付きです。厚生労働省の基準において、特養の看護師配置は「日中常駐」が基本義務であり、夜間は介護職員のみが勤務し看護師はオンコール(電話待機)で対応する施設が多数を占めます。そのため、喀痰吸引が頻回に必要な方、インスリン投与が必要な方、経管栄養(胃ろう)の管理が夜間に及ぶ方などは、医療依存度の上昇に伴って「施設内での対応困難」と判断され、協力医療機関への入院を余儀なくされる現実があります。
これに対し、有料老人ホームの上位クラスでは、看護職員24時間常駐を標榜し、手厚い医療連携によって末期がんのターミナルケアや重度心疾患の看取りまで施設内で完結させる体制を整えています。ただし、その手厚さは「手厚い人員配置加算」や管理費として月額利用料に直接反映されます。
また、待機期間の実態も地域格差が浮き彫りになっています。厚生労働省が公表する待機者調査データや地方自治体の統計によると、都市部における特養の申込者数は依然として高止まりしており、要介護4〜5で緊急性が極めて高くなければ、数ヶ月から2年以上の入居待ちが発生することも珍しくありません。一方、地方都市や郊外のユニット型個室(費用が高めに設定されている施設)では待機期間が数ヶ月未満で済む事例も見られ、「安価な多床室特養に申込が集中し、ユニット型や民間施設は空室がある」という需給の歪みが生じています。