一生を部屋住みのまま終えることは「冷や飯食い」と揶揄され、武士にとって最大の屈辱でした。この暗黒の境遇から抜け出すための数少ない脱出ルートが「他家への養子縁組」です。
跡取り男子がいない武家は、主君からのお家断絶処分を避けるために婿養子や養子を必死で探していました。部屋住みの男たちにとって、跡継ぎを求める家へ養子入りすることは、自らが一国一城の主(当主)となり、堂々と結婚して俸禄を得る唯一無二のチャンスだったのです。
文武に励んで評判を高めたり、親類や仲介人を通じて有力な旗本・大名家への養子縁組を勝ち取ったりした者は、見事に部屋住みからの脱出を果たしました。幕末に活躍した勝海舟の父・勝小吉のように、養子先で波乱万丈の人生を歩んだ人物も少なくありません。