ロシアがウクライナへの軍事行動を強行した最大の戦略的動機は、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大に対する極度の警戒感です。
冷戦終結以降、かつてソ連の影響下にあったポーランド、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ルーマニアなどが次々とNATOに加盟しました。ロシアの指導層にとって、約2,000キロメートルに及ぶ国境を接するウクライナがNATOに加盟することは、首都モスクワの喉元に敵対勢力のミサイル基地を配置されることに等しい「越えてはならないレッドライン」とみなされていました。
プーチン大統領が掲げた公式の目的は「ウクライナの非軍事化・中立化」や「非ナチ化」ですが、その根底にあるのはロシアの勢力圏維持と、自国を大国として扱わせる国際秩序の再構築です。しかし、この強硬な軍事行動は逆効果を生み、従来中立を保っていたフィンランドやスウェーデンがNATOに加盟するなど、結果的にロシアを取り巻く包囲網をより強固にする皮肉な結果を招いています。