近隣の超高層ビル展望施設がインバウンド需要の高まりを背景に入場料を引き上げるなか、なぜ都庁展望台は開業以来頑なに「入場無料」を貫いているのでしょうか。その根底には、日本を代表する建築家・丹下健三氏が設計構想時に組み込んだ「都民に開かれた言論・文化の広場」という庁舎の設計思想があります。
東京都財務局および総務局の公開資料や当時の建築記録を紐解くと、1991年に有楽町から新宿へと移転した新都庁舎は、単なる行政官庁の執務拠点としてではなく、「都民共有の都市遺産」として計画されました。展望フロアに税金が投じられている以上、都民憲章に基づき「誰もが排除されずに首都の姿鳥瞰できる場」として機能させる原則が敷かれているのです。
「無料であること」は行政サービスの還元措置であると同時に、東京というメガロポリスのブランド力を世界へ発信するための観光推進戦略でもあります。展望台単体でのチケット収益を追うのではなく、訪れた人々が新宿周辺で飲食や宿泊、物販を消費する広域経済効果を生み出す「ハブ」として設計されている点に、公的施設ならではの合理的な投資ロジックが存在しています。