あしたのジョー最終回を語る上で欠かせないもう一つの極めて重要な要素が、ヒロインである白木葉子との関係性の決着です。物語の終盤、世界タイトルマッチの直前の控室において、葉子は自らのプライドや財閥令嬢としての立場をすべてかなぐり捨てて、ジョーへの激しい思慕を吐露します。
「好きだったのよ、矢吹くん! あなたが好きだったの!」
ボクシングによって力石を奪われ、カーロスを奪われ、そして今まさにジョー自身をも呑み込もうとしている残酷なリングへ向かう彼を制止するため、葉子は涙ながらに愛を告白しました。この告白に対し、ジョーは動揺することなく、静かに微笑んで自らの愛用するグローブを手渡します。
「これを…あんたに貰ってほしいんだ。世界でいちばん…強い男が待っているリングへ行くんだから」
この振る舞いは、白木葉子の告白とその後を巡る長年のファンコミュニティにおいて「ジョーが見せた唯一無二の求愛への返答」として深く考察されています。言葉による直接的な愛の誓いを交わす代わりに、自らの命そのものであるグローブを託すこと。それは、これから始まる死闘のすべてを葉子に見届けてほしいという、ジョーなりの不器用で純粋な魂の委託でした。
試合終了後、葉子はリングサイドで崩れ落ちることもなく、ジョーの戦いぶりを凛とした眼差しで見届けました。原作連載終了後、ファンの間では「葉子は白木財団の事業を通じて恵まれない子どもたちの支援を続けたのではないか」「ドヤ街の丹下ジムを生涯にわたって守り続けたのではないか」といった様々な二次的言説や敬意に満ちた考察が交わされ続けています。