民俗学の研究者たちによって行われた全国のわらべうた収集記録を紐解くと、人身売買説を裏付ける直接的な古文書や歴史的証拠は存在しません。実際のルーツとして最も有力視されているのは、「花売り(植木市)の商取引を模したごっこ遊び」と「娘選びの儀礼的遊戯」が融合した形です。
かつての庶民の生活圏では、行商人や市場での駆け引きを子供たちが真似て遊ぶ習慣が日常的にありました。「一匁で花を買う」「安く値切る」「負けて悔しい」というやり取りは、商売の現場を再現したリズミカルな掛け合い歌が原型です。地域によっては「箪笥長持(たんすながもち)あの子がほしい」といった嫁入り道具を連想させる歌詞が残っており、集落間で花嫁候補を選び合う習俗が子供の遊びへと昇華された痕跡も見られます。
では、なぜこれほど強烈な人身売買説が定着したのでしょうか。その発端は、昭和末期から平成初期にかけて巻き起こった「童謡の怖い意味」ブームにあります。テレビ番組のオカルト特集や都市伝説を扱った新書本、ネット掲示板の書き込みを通じて、民俗的な暗黒面(飢饉、間引き、遊女の歴史)とキャッチーなわらべうたが結び付けられ、エンターテインメントとして消費・拡散されていったのが真相です。