栄駅のほど近く、地上を行き交う人々の足音を背にして階段を下る。ドアの向こうに広がるのは、薄暗く落ち着いた照明とダークトーンの木製家具が織りなす大人の隠れ家だ。カウンター越しには、マスターやスタッフが手際よく、しかし無駄のない所作で珈琲を仕込んでいる。
この店が誕生して以来、大切にされてきたのは「日常からの遮断」だ。現代の都市生活はあまりにも明るく、あまりにも騒々しい。だがここでは、照明のトーンを極限まで落とすことで、訪問者の意識を五感そのものへと向けさせる。テーブルに置かれた文庫本をめくる音や、カップに注がれる液体のかすかな音が、上質なBGMとして心地よく耳に届く。