なぜタイトルは『蛾と蝶』なのか。昆虫学的に見れば両者は明確に区別されるが、夜の闇に引き寄せられる習性や、幼虫から劇的な変容を遂げるプロセスなど、多くの共通点を持つ。このタイトル自体が、作品全体に張り巡らされた巨大な伏線となっている。
劇中において、表舞台で脚光を浴びる「蝶」のような人物と、日陰の闇で生きてきた「蛾」のような人物の立場が、ある事件をきっかけに少しずつ入れ替わっていく。誰が本物の光を浴びているのか、そして誰が偽りの姿を演じているのか。二転三転する伏線の回収劇は、ラスト数分間で一気に結実し、観客を深い思索へと誘う。