日本における「タツノオトシゴ」という名称は、漢字で「竜の落とし子(あるいは海馬・竜宮の使)」と表記されます。天に昇る架空の霊獣「竜」が海に産み落とした子どもであるという古来の民間伝承が由来となっており、古くから安産や夫婦円満、健康長寿の縁起物として親しまれてきました。
一方、英語圏では「seahorse(海の馬)」と呼ばれます。頭部が馬の顔つきに酷似していることから名付けられ、学名のHippocampusもギリシャ語の「hippos(馬)」と「kampos(海の怪物)」が合わさった言葉です。東洋では「竜」、西洋では「馬」と見立てられたことからも、その姿がいかに魚の常識からかけ離れているかが分かります。
その独特な泳ぎ方も特徴的です。タツノオトシゴは背中にある1枚の背びれを1秒間に約30〜70回もの超高速で波打たせることで前進します。舵取りは首元の小さな胸びれで行いますが、遊泳力は魚類の中でも極めて低く、時速約1.5メートル程度しか出せない種も存在します。この泳ぎの遅さをカバーするために、体色を周囲のサンゴや岩肌に合わせて変化させる高度な擬態能力を発達させました。