個人の資質や努力以上に、どの産業セクターに身を置くかによって生涯賃金の上限と下限は冷徹に固定化されます。大手民間リサーチ会社の集計や有価証券報告書の開示情報を総合した業界別生涯年収ランキングは、日本社会の構造的格差を克明に物語っています。
上位に君臨するのは、総合商社、メガバンク・大手金融、大手デベロッパー、キー局・大手出版、大手製薬企業などです。これらの業界では、40代前半で年収1,200万〜1,500万円に達するケースも珍しくなく、生涯賃金の中央値は3億円から4億円規模に到達します。収益構造が寡占化されており、参入障壁が高く、1人当たりの付加価値額が飛び抜けて高いためです。
一方で、介護福祉、飲食・外食、宿泊・観光、小売、一部の自動車整備や保育現場といった労働集約型産業に目を転じると、業界の中央値は1億3,000万〜1億6,000万円程度にとどまります。この格差は、現場で働く個人の能力差や労働時間の長短によるものではありません。産業が持つビジネスモデルの利益率、価格決定権の有無という構造的な要因によって生じているのです。
新卒時や第二新卒時の業界選定という、人生の極めて早い段階での決断が、その後の40年間にわたって1億5,000万円以上の生涯所得差として跳ね返ってくる――これが現代の労働市場が抱える最も残酷な現実の一つです。