キャリア形成の観点から見て、大学職員を「絶対にやめとけ」と経験者が強く主張する最大の論点が、スキルが身につかない理由と、それに直結する大学職員からの転職難易度の高さです。
大学の事務業務の大半は、学校教育法や私立学校法、文部科学省の設置基準、そして各大学固有の「寄附行為」や学内規程に則った定型処理です。稟議書の回覧手順、学内委員会向けの議事録作成、教員への根回し作法といったスキルは、その大学の壁を一歩外に出れば1円の価値も持ちません。
民間企業で高く評価される「定量的な売上実績」「自ら課題を発見して事業を推進する突破力」「汎用的なIT・デジタル実装能力」を身につける機会は、大学組織では極めて乏しいのが実態です。人事異動も3〜4年周期で「学生課」「教務課」「財務課」「総務課」と脈絡なく行われることが多く、特定領域の専門性(スペシャリティ)が確立されません。
この結果、何が起きるのか。組織心理学で言う「キャリア・プラトー(頭打ち現象)」です。20代後半から30代半ばに差し掛かり、業界の将来不安から「民間へ転職したい」とエージェントに登録しても、突きつけられるのは冷酷な現実です。
- 実務経験の評価不足:民間企業からは「公務員同様、決められた予算とルールを消化してきただけ」とみなされ、ビジネス感覚を疑問視される。
- 年齢と年収のミスマッチ:大手私大出身者の場合、業務能力に対して給与が高すぎるため、同等年収での転職先がコンサルや大手金融などに限られるが、スキルが追いつかない。
- 市場価値の摩耗:ポータブルスキルがないまま35歳を過ぎると、他業界へのキャリアチェンジは絶望的となり、経営が傾く大学に運命を共にするしかなくなる。
「ぬるま湯」に浸かっているつもりが、気づいたときには外の世界への脱出口を失っている。これこそが、入職者が後から痛烈に味わう最も恐ろしい後悔の真相です。