暗黒武術会決勝戦における戸愚呂弟と浦飯幽助の名勝負は、単なる善悪の対決ではなく、「正反対の選択をした二人の武道家の魂の対話」として描かれています。戸愚呂弟は幽助のなかに、かつて自分が持っていた「仲間を思い、全力で限界を突破する輝き」を見出していました。
だからこそ、幽助が生ぬるい覚悟で戦うことを決して許しませんでした。幽助の潜在能力を極限まで覚醒させるため、戸愚呂弟はあえて冷血な鬼と化し、桑原和真の急所を突いて命を奪ったように装います(実際には即死を避けて手加減していたことが後に判明します)。「お前もしかしてまだ、自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」と幽助の生存本能を極限まで揺さぶり、自らを本気で殺しに来るよう仕向けたのです。
結果として、幽助は仲間の死(と思い込んだ絶望)を乗り越えて霊光玉の真の力を解放し、戸愚呂弟の100パーセント中の100パーセントの肉体を打ち破ります。幽助に敗れ、崩壊していく肉体の中で戸愚呂弟が浮かべたかすかな微笑みは、敗北への悔しさではなく、「かつての自分が選び損ねた正しい強さ」に敗れることができたことへの、深い安堵と救済を物語っていました。