人工心肺装置は、コンセントを差せば全自動で動く機械ではありません。手術中、患者の生命維持パラメータを1秒単位で手動コントロールし続ける専任の技術者が臨床工学技士(CE: Clinical Engineer)です。
執刀医である心臓血管外科医が術野に集中している間、臨床工学技士は装置の前に陣取り、血圧、血流量、血液ガス分圧、ヘマトクリット値、体温、麻酔深度など膨大な生体情報をリアルタイムで監視します。血液が固まるのを防ぐ抗凝固薬「ヘパリン」の投与量を細かく計算し、術中の凝固機能を秒刻みでコントロールするのも技士の重大な任務です。
「送血圧が上昇した」「酸素化能が一時的に低下した」といった微細な兆候を見逃さず、執刀医や麻酔科医と瞬時に連携を取りながらポンプの回転数やガスの混合比率をミリ単位でアジャストします。執刀医が心臓の手術を完遂できるのは、背後で患者の生体バランスを完璧に保ち続ける臨床工学技士の卓越した技術とプレッシャーへの耐性があるからです。