首を刎ねられ、肉体が灰へと崩れ去る狭間の世界で、童磨は胡蝶しのぶの魂と再会します。この「童磨としのぶの地獄の会話」こそ、作中屈指の異様な読後感を残す名シーンです。
生前、人間時代から鬼になった後まで、童磨は一度たりとも真の感情を抱いたことがありませんでした。両親が目の前で惨死した時すら「部屋を汚さないでほしい」としか思わず、信者を喰らうことも「苦しみから解放して救済してあげている」という空虚な理屈で処理していたのです。
ところが、自分を死に至らしめたしのぶの生首を前にした瞬間、童磨の胸に生まれて初めての衝撃が走ります。心臓が高鳴り、顔を赤らめた童磨は、無垢な笑みを浮かべてこう告白しました。
「ねえしのぶちゃん、俺と一緒に地獄へ行かない?」
自らの命を奪った女性に対して恋に落ちるという、あまりにも歪で身勝手な求愛。しかし、それに対するしのぶの返答は、一片の容赦も情緒も交えない、氷のように冷徹な一言でした。
「とっととくたばれ糞野郎」
満面の冷笑とともに放たれたこの言葉によって、童磨の歪んだロマンスは完膚なきまでに叩き潰されました。救済者気取りの怪物は、誰からも理解されず、愛されることもなく、ただ一人で地獄の業火へと沈んでいったのです。