口コミサイトや掲示板を調査すると、「医師の説明が早口で圧倒された」「質問しづらい雰囲気だった」といったネガティブな書き込みを目にすることがあります。しかし、こうした声の背景には、受診者側の期待と耳鼻咽喉科という診療科の特性の間に生じる「構造的なギャップ」が存在します。
内科や心療内科のようにじっくりと対話を重ねる診察スタイルと異なり、耳鼻咽喉科は耳垢の除去、鼓膜の切開、鼻腔内の吸引洗浄、喉のネブライザー吸入など、専門器具を用いたダイレクトな物理的処置が診療の中心となります。迅速な判断と正確な手指の動きが求められるため、診察室での医師の集中度は極めて高くなります。このプロフェッショナルな集中状態が、受け手によっては「冷淡」「事務的」と映ってしまう側面があるのです。
また、「予約したのに待たされた」という苦情の多くは、前の患者に急性中耳炎の緊急処置や鼻出血の止血処置、重症アレルギー発作の対応などが挟まったケースです。医療は工業製品の製造ラインではないため、急患への割り込み処置は不可避です。診察室での医師の口調や態度は、決して患者個人への不満ではなく、地域全体の医療崩壊を防ぎながら1人でも多くの苦痛を早く取り除こうとする責任感の裏返しであることを認識しておく必要があります。