ジェシーというキャラクターを語る上で避けて通れないのが、『トイ・ストーリー2』劇中で明かされた元の持ち主「エミリー」との決別です。かつてエミリーにとって一番の宝物だったジェシーは、乗馬ごっこやベッドでの語らいなど、温かな愛情に包まれた至福の黄金期を過ごしていました。
しかし、エミリーの成長に伴い部屋のインテリアはカウボーイ調からサイケデリックなポスターや化粧品へと変わり、ジェシーはベッドの下の埃っぽい暗闇へと追いやられます。ある日、再びエミリーの手に取られて歓喜したのも束の間、連れて行かれた先は木枯らしの吹く農場の道端でした。チャリティ用のダンボール箱の中に置き去りにされた瞬間、ジェシーの心には修復しがたい深い傷が刻まれたのです。
この回想シーンで流れる名曲『ホエン・シー・ラヴド・ミー(When She Loved Me)』(作詞・作曲:ランディ・ニューマン/歌:サラ・マクラクラン、日本語吹き替え版:大木理紗)は、アカデミー賞歌曲賞にノミネートされるなど映画史に残るエモーショナルな演出として語り継がれています。「愛されていた頃」を歌い上げる切ないメロディは、子どもが大人になる過程で必ず生じる「おもちゃの卒業」という残酷な現実を浮き彫りにしました。
長年暗い箱の中に閉じ込められていた経験から、ジェシーは極度の閉所恐怖症と暗闇恐怖症を発症。箱に入れられそうになると過呼吸のようなパニック状態に陥る描写は、単なるアニメーションの枠を超えたリアルな心理的トラウマとして描写されています。そんな彼女の頑なな心を救ったのが、同じヴィンテージ・トイとして寄り添い続けた相棒の馬「ブルズアイ」の無償の愛と、ウッディが提示した「再び子どもに愛される歓びを信じる勇気」でした。