永田町において「麻生氏の意向」が今なお政権の命運を左右するのはなぜなのか。政治資金規正法を巡る問題以降、安倍派(清和政策研究会)や岸田派(宏池会)、二階派(志帥会)などが解散を決めた中にあっても、麻生太郎氏が率いる「志公会(麻生派)」は派閥の存続を堅持しました。政治アナリストや報道各社の取材データを総合すると、麻生氏がキングメーカーとして影響力を行使できる背景には、明確な3つの力学が存在します。
第1の決定打は、「数の力」と強固な集団規律です。議院内閣制における政権運営の本質は国会の過半数を制することであり、自民党総裁選においても派閥やグループの結束した票田が勝敗を分けます。志公会は所属議員約50名を抱え、統率が取れたブロックとして行動できる唯一の巨大勢力です。総裁選で誰を推すか、内閣不信任決議案に対してどう動くかにおいて、麻生氏の一声がそのまま数十票の塊として機能するため、どの政権執行部も麻生氏を無視して党運営を行うことは不可能です。
第2の理由は、「資金力とパトロンとしての面倒見の良さ」にあります。麻生氏は後述する通り、一族が築き上げた巨大企業グループの背景を持ち、自民党内でもトップクラスの資産家として知られます。若手議員に対する選挙指南や資金的サポート、折に触れて高級料亭などで食事を共にしてパイプを築く「昭和型リーダーシップ」を現代でも忠実に実践しています。派閥の若手議員からは「叱責されることはあっても、最後は必ず身体を張って守ってくれる親分」としての絶対的な忠誠心を集めており、これが党内基盤の強靭さにつながっています。
第3に、国際金融・外交ルートにおける稀有なパイプと政策通の側面です。派手なスーツや斜に構えた語り口が注目されがちですが、G7やG20をはじめとする国際会議の場に財務大臣として長年出席し続けた実績は伊達ではありません。各国の財務相や中央銀行総裁、さらには米国の要人とも直接電話で意見交換ができる人脈を保持しており、外相経験者としての国際感覚は党内でも群を抜いています。単なる政局屋ではなく、国家財政と安全保障のリアリズムを熟知した「政策のアンカー(錨)」としての重みが、首相経験者たちをして麻生氏に頭を下げさせる理由となっています。