愛知県小牧市の田縣神社が、国境を越えて国際的なバズを巻き起こし続ける最大の要因は、毎年3月15日に斎行される「豊年祭(ほうねんさい)」の視覚的インパクトにあります。直径約60cm、長さ2mあまりにも及ぶ巨大な男根像「大男茎形(おおおわせがた)」を載せた神輿が屈強な男衆に担ぎ上げられ、町中を進む光景は、欧米メディアから「The Penis Festival」として報じられ、毎年数多くのインバウンド観光客を呼び寄せています。
神社公式の由緒書や『延喜式神名帳』の記録を紐解くと、田縣神社の起源は弥生時代末期から古墳時代にまで遡ります。主祭神は五穀豊穣と開拓の神である「御歳神(みとしのかみ)」、そして郷土を開拓した玉姫命(たまひめのみこと)。大同2年(807年)に編纂された古典『古語拾遺−御歳神の条−』には、大地を耕し作物を実らせる地母神の力と、そこに生命力を吹き込む天神の営みが語られており、男茎形を奉納して豊作と子孫繁栄を祈る俗習が確立されました。
農耕社会において「土に種を蒔いて実りを待つこと」と「母胎に命が宿り子どもが産まれること」は完全に同義でした。「産むは生む」という言霊の通り、農業の五穀豊穣祈願は時代を経て、人間界における子宝・安産・夫婦円満の祈願へと昇華していったのです。境内に足を踏み入れると、単なる好奇心で訪れた観光客が、本殿奥に奉納された無数の木彫りや石造りの男茎形を前にして、次第に敬虔な祈りの空気へと引き込まれていく現場の空気感が肌で感じられます。