映画『静寂の淵』で彼女が演じたのは、ある事件をきっかけに言葉を失った女性・サエだ。セリフがほとんどないこの難役に、彼女は全身の筋肉、視線の揺らぎ、そして呼吸の狂いだけで挑んだ。監督を務めたジャン=ピエール・ルフェーブルは「彼女の瞳は、10ページに及ぶ台本よりも多くのことを語る」と絶賛している。
カンヌやベネチアと並ぶ世界三大映画祭の一つであるベルリンでの受賞は、日本のインディペンデント映画界にとっても大きな快挙だ。これまでの「日本映画=アニメや特定の監督作」という固定観念を打ち破り、一人の俳優の純粋な演技力が国境を越えたことを証明してみせた。