ここで鍵を握るのが、後払い契約(ディファード・コンペンセーション)という特殊な構造だ。契約期間である10年間のうちに大谷が受け取る現金の総額は2000万ドルにとどまる。そして残る6億8000万ドルは、契約満了後の2034年から2043年にかけて分割で支払われる仕組みになっている。
なぜこのようなスキームが必要だったのか。答えはMLB(メジャーリーグベースボール)が課すラグジュアリー・タックス(奢侈税)の回避と、チームの補強資金の確保にある。大谷自身の現役期間中の年俸推移をあえて低く抑えることで、クラブは他の強力な選手を獲得する財務的余白を手に入れた。自分一人が稼ぎ勝つのではなく、チーム全体で勝つための究極の無私であり、極めて計算されたビジネスの選択だったと言える。