この狂乱は、小売りの現場にもかつてない波紋を広げている。都心の大型スーパーマーケットでは、青果コーナーのきゅうり平積み台の真横に、純正ごま油、すりおろしニンニクのチューブ、そして顆粒だしが所狭しと並べられる異例のディスプレイが常態化した。
スーパーの仕入れ担当者はため息交じりに明かす。「週末の夕方になると、きゅうりとともに調味用のごま油が棚からごっそり消えるんです。以前なら精肉コーナーに向かっていたはずの仕事帰りの会社員が、きゅうり3本と調味料だけをカゴに入れてセルフレジへ直行する。惣菜を買うより安く、外食より圧倒的に早く、居酒屋以上の満足感が得られる。節約志向とタイパ志向が、最も純度の高い形で結実した結果でしょう」。
肉や魚の価格が高止まりを続けるなか、比較的価格が安定している緑黄色野菜を「メインディッシュ級のツマミ」に昇格させる防衛本能。やみつききゅうりは、家計の防波堤としても機能しているのだ。