名古屋の手羽先唐揚げを語る上で避けて通れないのが、二大巨頭である元祖手羽先唐揚の歴史を拓いた「風来坊」と、全国区の知名度を誇る「世界の山ちゃん」の存在です。両者は同じ「手羽先」という食材を用いながら、その開発思想と味わいの方向性は全く異なります。
手羽先唐揚げの発祥は1963年(昭和38年)に遡ります。風来坊の創業者である大坪健冷氏が、当時スープのダシ取り用として二足三文で扱われていた手羽先に着目し、看板メニューだった若鶏の半身揚げのタレを応用したことがすべての始まりでした。肉が薄い手羽先だからこそ、表面をカリッと揚げて秘伝のタレを染み込ませる調理法が劇的な旨味を生み出しました。
一方、「世界の山ちゃん」は1981年(昭和56年)、創業者・山本重雄氏がわずか4坪・13席の串かつ・焼き鳥店からスタートさせました。風来坊へのリスペクトを持ちつつも、後発として差別化を図るために独自開発されたのが、舌が痺れるほどの特製コショウを効かせた「幻の手羽先」です。この刺激的なスパイシーさが、ビールやハイボールと抜群の相乗効果を生み、熱狂的な支持を集めました。